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インプラント
インプラント治療をご検討の際に、「インプラント周囲炎」についての説明を受けた方は多くいらっしゃるでしょう。 「インプラント周囲炎にかかるとどうなる?」と気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。 インプラントを長く安定して使い続けるためには、インプラント周囲炎にかからないように予防することが大切です。 「予防」と聞くと、何か特別な処置や大変なお手入れが必要なように思えるかもしれません。 けれども、インプラント周囲炎を防ぐためには、日々のセルフケアを丁寧に行うことや、定期的に歯科でメンテナンスを受けることなど、基本的な予防ケアを継続することがポイントです。 ここでは、インプラントを長く使い続けていただくために、「インプラント周囲炎の原因」や「予防のために大切なこと」についてお話しします。 野呂 端良 院長 野呂 端良 院長 2009年 朝日大学歯学部卒業 京都府立医科大学附属病院にて研修 2012年 朝日大学インプラント科 在籍中 2014年 日本顎咬合学会 認定医取得 2015年 歯科医師臨床研修指導医(厚生労働省指定) 2018年 坂根歯科診療所勤務(坂根清文先生に師事) 2019年 坂根歯科診療所 院長就任 2020年 日本口腔インプラント学会専門医取得 2023年 りょうデンタルクリニック開院 医院名:りょうデンタルクリニック 所在地: 〒566-0001 大阪府摂津市千里丘1丁目4−17
野呂 端良 院長
Contents
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に炎症が起こり、インプラントを支えている歯ぐきや骨などの組織に影響が及んでいる状態です。 インプラント周囲炎は段階的に進行します。
インプラントの周囲に歯垢(プラーク)が蓄積すると、周囲の粘膜に炎症が起きて、出血や腫れといった症状があらわれます。 これを「インプラント周囲粘膜炎」といいます。 この段階では、炎症は粘膜にとどまっていて、骨にはまだ影響が及んでいません。 歯磨きの方法を見直したり、クリーニングを受けたりすれば、炎症を抑えられる可能性がありますが、そのままにしていると炎症の範囲は広がります。 インプラント周囲粘膜炎が進行して、骨に影響が及んでいる状態が、「インプラント周囲炎」です。 インプラント周囲炎によって骨が失われると、インプラントを支える力が弱くなります。
インプラント周囲炎では、次のような症状がみられることがあります。 ・インプラントの周囲の歯ぐきが赤く腫れる ・歯磨きの際に出血する ・インプラントの周囲から膿が出る ・インプラント周囲の歯ぐきが退縮する ・噛んだときに違和感がある ・インプラントがぐらつく 症状には個人差があり、初期の段階では、自覚症状がほとんどないこともあります。 歯ぐきの腫れや出血などの変化に気づいたら、早めに歯科を受診しましょう。 インプラント周囲炎になったからといって、必ずしもインプラントを失うわけではなく、初期の段階で発見できれば、セルフケアの見直しや歯科のクリーニングなど、状態に応じた治療によって改善できる可能性があります。 一方で、そのままにしていると、骨が失われていきインプラントを支える力が弱くなり、治療が難しくなる場合があります。
インプラント周囲炎は、特定の原因だけで起こるのではなく、お口の中の環境や日頃のケア、全身の健康状態など、さまざまな要因が関係して発症することがあります。
インプラント周囲炎のおもな原因は、インプラントの周囲に付着した歯垢(プラーク)です。 お口の中の細菌が歯やインプラントの表面に付着して増殖すると、「歯垢(プラーク)」が形成されます。 歯垢(プラーク)は単なる汚れではなく、細菌とその産生物からなる「細菌のかたまり」です。 歯垢(プラーク)1mgの中には10億個以上の細菌が存在しており、細菌が産生する毒性物質などによって歯ぐきに炎症が起こり、赤く腫れたり出血したりすることがあります。 さらに炎症が進行すると、インプラントを支えている骨にも影響が及びます。
参考:厚生労働省「プラーク / 歯垢」より >
喫煙もインプラント周囲炎のリスクを高める要因の一つです。 タバコに含まれるニコチンなどの作用によって血流が悪くなると、歯ぐきなどの組織に十分な酸素や栄養が届きにくくなります。 また、免疫機能にも影響を与えるため、炎症が起こった際に治癒しにくくなる可能性があります。
歯ぎしりや食いしばりも、インプラント周囲炎のリスクを高める可能性があります。 天然の歯には、噛んだときの力を吸収する「歯根膜」という組織がありますが、インプラントには歯根膜がないため、噛む力が直接インプラントや周囲の組織に伝わります。 歯ぎしりや食いしばりによって、強い力がくり返し加わることで、インプラント周囲の組織に負担がかかり、トラブルにつながる可能性があるのです。
糖尿病も、インプラント周囲炎の原因となる可能性があります。 糖尿病は、血糖値が高い状態が慢性的に続く病気です。 高血糖の状態が続くと免疫機能が低下し、細菌に対する抵抗力が弱まります。 さらに、血流が悪くなることで傷口の治癒も遅れやすくなります。 そのため、糖尿病のコントロールが不十分なままインプラント治療を行うと、インプラント周囲炎などの感染症を起こしやすく、感染した場合も治療が長引く可能性があるのです。 一方で、血糖コントロールに問題がなければ、リスクを抑えながらインプラント治療を行える場合があります。
インプラント周囲炎と歯周病は、歯垢(プラーク)中の細菌が炎症の大きな原因となる点は共通していますが、周囲の組織の構造や炎症の広がり方などに違いがあります。
歯周病は、天然歯の周囲に歯垢(プラーク)が蓄積することで歯ぐきに炎症が起こり、進行すると歯を支える歯槽骨が破壊されていく病気です。 インプラント周囲炎の場合は、インプラントの周囲の組織に炎症が起こります。 天然の歯には、歯と骨の間に「歯根膜」が存在していますが、インプラントの周囲には歯根膜がありません。 歯ぐきなどの歯周組織への血液供給に関わる歯根膜がないことから炎症が周囲の深い組織に及ぶ可能性があります。 さらに、インプラントそのものには神経がないため、インプラントの周囲で炎症が進んでいても、痛みや変化を感じにくく、発見が遅れることがあり、気づいたときには、インプラントを支える骨が失われている場合もあります。
過去に歯周病になったことがある方は、インプラント周囲炎を発症するリスクが高いとされていて、ある調査によると、歯周炎にかかったことがある方とない方では、10年後のインプラント周囲炎の発症率が28.6%と5.8%となり、大きな差がありました。
参考:J-STAGE|The Japanese Journal of Clinical Dentistry 2021年 第7巻・第1号 「インプラント周囲炎に対する考え方と対応 」p7より >
インプラント治療を始める前には、お口の中を調べ、歯周病の症状がある場合は、歯周病治療を優先して行います。 歯周病治療後は、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスを欠かさずに行い、健康な状態を維持することが大切です。
インプラント周囲炎を予防するためには、ご自宅でのセルフケアと歯科での定期的なメンテナンスを組み合わせることが重要です。
予防の基本は、毎日の歯磨きです。 お口の中に歯垢(プラーク)を溜めないように、丁寧に汚れを落としましょう。 ただし、歯ブラシだけでは「インプラントの周囲」や「歯と歯の間」まで十分に清掃できない場合があります。 特に、インプラントが複数本入っている場合や、ブリッジタイプのインプラントをお使いの場合は、歯ブラシが届きにくく、清掃が難しい部分が生じることがあります。 デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助的な清掃用具を取り入れて、汚れを取り除くことが大切です。 また、喫煙習慣や歯ぎしり・食いしばりもインプラント周囲炎や歯周病のリスクを高めることがあります。 気になる習慣がある場合は、歯科に相談しながら、ご自身に合った対策を考えていくとよいでしょう。
インプラントを長く安定してお使いいただくためには、インプラントだけでなく、残っている歯を含め、お口全体の健康状態を確認することも重要です。 毎日丁寧に歯磨きをしていても、すべての汚れを取り除くことは難しく、気がつかないうちに汚れが蓄積し、歯周病やインプラント周囲炎の原因となる可能性があります。 歯科のメンテナンスでは、インプラントの周囲に炎症が起きていないか、歯ぐきや骨の状態に変化がないかなどを確認し、必要に応じて専門的なクリーニングを行い、ご自宅でのケアだけでは取り除きにくい汚れを除去します。 メンテナンスの頻度は、お口の状態やインプラントの本数、歯周病のリスクなどによって異なるため、歯科医師と相談しながら、ご自身に合った頻度で定期検診を受けましょう。
インプラントは、失った歯を補い、噛む機能や見た目を改善するための治療方法です。 インプラントを長くお使いいただくためには、インプラント周囲炎を予防することが大切です。 インプラント周囲炎は、プラークの蓄積だけでなく、喫煙や歯ぎしり・食いしばりなど、さまざまな要因が関係して起こることがあります。 さらに、初期の段階では自覚症状がないケースも多いため、毎日のセルフケアを丁寧に行うことはもちろん、歯科医院で定期的に状態を確認することも重要です。 「痛みがないから問題ない」と考えるのではなく、毎日のセルフケアと歯科医院でのメンテナンスを続け、インプラントと残っている天然歯の両方を守っていきましょう。
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